IT系会社員ブロガー

某IT企業に勤める40代会社員の雑記帳

浅い記事がとんでもなく迷惑を掛けることを認識すべき

f:id:breakthrough1020:20170219224829p:plain

:%s/private/public/g

随分と前の話しですが、まだ問題解決しておらず、未だに多くの皆さんが大変な迷惑を被っていると思います。

あるブログに、ある海外の銀行のデータセンターで、消防訓練のため消火ガスの噴射をしたところ衝撃音でハードディスク(HDD)が故障した記事が掲載されました。

http://www.privatekey1.jp/blog/16/ingatm.html

※このブログ自体有名かどうかは知れませんが、私自身何度か検索に引っかかって閲覧した経験はあります。

ブログ作者は元雑誌編集者ということで、編集者らしく、広く浅~い記事を量産されており、広告収入で生計を立てられているようです。特に海外イベントへ自ら参加し、いち早く日本語で記事を掲載することで、アクセス数を稼ぐのが多いようです。

で、件の消火ガスの噴射でのハードディスク故障ですが、これはかなり昔から言われていたことです。

2010年頃に幾つか論文が出ているようですが、いわゆるガス噴射型の消火設備において、実際に消化ガス(ハロン、窒素、二酸化炭素など)が噴射される時に、100~130dB(デシベル)の音が発生する可能性があり、その音がコンピュータのハードディスクドライブ(HDD)に影響を与えるというものです。
ちなみに、110dBとは、自動車のクラクション、120dBとは飛行機のエンジン近く、130dBについては、痛覚に近い感覚となり、聴覚に悪影響を与えるレベルらしいです。

これまでも「消火ガス放射時の音圧がハードディスクドライブに影響を与える可能性がある」とされており、認識はあったもののそれ程大きな話題にはなっていなかったのが、この privatekey の中途半端な記事のおかげで、今大変なことになっています。

実際の銀行のニュース記事(BBC)では、シーメンス調査結果として以下が記載されています。

・above 110dB, most hard disks would deliver a degraded performance
 110dBを超えると、ほとんどのハードディスクは性能が低下

・above 130dB most disks would stop delivery data
 130dBを超えると、ほとんどのディスクが配信データが停止

・above 140dB, most disks would suffer permanent damage and there could also be other unpredictable faults
 140dBを超えると、ほとんどのディスクに永久的な損傷が発生し、その他の予期しない障害が発生する可能性がある

そもそも、サーバやストレージが精密機器のため、そりゃそうですよね。

しかしながら

  • 消防訓練や点検で、消化ガスを大量に噴射させることはまずありえない。
  • データセンター内の機器設置フロアに、そもそも可燃物は置かれていないため、火災自体が発生するリスクが極めて低い。
  • 消化ガスを噴射しても機器(ハードディスク)との距離も考慮すると110dB程度で、せいぜい性能低下(転送速度に変化を与える)レベル。


そもそも消化ガスが噴射されること自体が、音ではなくガス自体が機器に影響を与える可能性もあるので消化ガスが噴射されることがないようにも対策を施しています

火災予兆(超高感度煙検知)システムを導入し、消化ガスを噴射させる火災報知設備より先に火災の予兆を検知し、火災を未然に防ぐため、消化ガスが噴射されることはまずないようにしています。

しかしながら、消化ガス噴射のハードディスクドライブへの影響リスクに対し、100%の対策を施すとなると、実際には、対策が施された静音形噴射ヘッドへの取替(取付)が必要になります。
この静音形噴射ヘッドがとんでもなくコストがかかり、データセンター規模にもよるが、億を超える場合も少なくないと思われます。

privatekey にて中途半端な記事のおかげで、おそらく全国のデータセンター事業者は、お客様からの対応にずっと追われていると思われます。お疲れ様です。
そもそも初めに「 privatekey 」のブログ自体の説明をすることがうんざりです...

政府・公共機関でもないのにPublicって名前を付けるなよ。

発生する可能性が限りなく低い火災、それに対する消化ガス噴射の静音対策...


だいたいハードディスクドライブ(HDD)は、半導体メモリのSSD(Solid State Drive)にどんどん入れ替わっています
消費電力も少なく、場所(スペース)も大幅に節約できるため、高い費用の掛かるデータセンターでは尚更ながら急速に入れ替えが進んでおり、少なくともあと数年で、消化ガス噴射で影響のあるハードディスクドライブ(HDD)は無くなるのに、億を超えるような対策が今必要なのか...

「もしも対策をしていないデータセンターがあるとすれば、何らかの対策が求められることになるでしょう。」だと~、分かって書いているのか!?